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由良 滋

白磁の明り

 私が金沢美術工芸大学から九州芸術工科大学へ赴任する際、教授の柳宗理先生から森正洋先生を紹介していただきました。着任後、早速お伺いし、その場所は美しい有明海が展望できるキャンプ場で、窯業試験場の皆様とも初めてお会いしました。

 続いて長崎県窯業技術センター主催の陶磁器デザイン討論会から参加の依頼を受け、十年間、年に一度の会に出席致しました。森先生も毎回出席されており、この会を通して先生のデザイン思想を垣間見ることが出来ました。私はこの会で大変刺激を受け、白磁デザインの新しい試みに挑戦致しました。その提案は白磁の案内板で、歴史的景観保存に取り組んでいた城下町、秋月に設置し、今では日本各地に普及し、私なりに責任を果たしたと思っております。

 森先生と柳先生との友情は永く、或る時、森先生は作品を持って柳事務所の工房を訪ねて批評を仰いだと聞いております。私も柳先生とは教育を通して福岡と沖縄の各大学でお世話になりました。

 柳、森の両先生と私と三人で旅をした際の懐かしい思い出があります。日田を訪ねた帰路、真夏の秋月に立ち寄り渓流に架けられた涼み台に寝転び、色々と語り合ったことです。お二人は生涯、無私の心でデザインの無名性を目指して造り続けられました。柳先生は各種にわたるデザインに、森先生は生涯、白磁を主に日常食器のデザインに取り組まれました。

 私には森先生が一本の白い太いローソクのように思えます。その芯には近代デザインの思想がしっかりと流れて、白磁の明りとなって最後まで照り輝きました。

 そこで私はその明りは何時、何処で点されたか、思い巡らします。先生は学生時代、神奈川県登戸の商工省工芸指導所に通っており、そこで剣持勇副所長から、生涯守り続けた近代デザイン思想を、仕事を通して教えられたと思います。剣持は戦前、仙台の工芸指導所で、ナチズムから逃れて1932年、来日した建築家、ブルーノ・タウトからヨーロッパの近代デザイン思想を制作を通して体験しており、戦後、その思想を継承して活躍致しました。

 終わりに、森先生の残された見事な明りを絶やすことなく、次の世代へと受け継がれますことを心より念願致します。

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