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前佐賀県知事  古川 康

森正洋先生とはこんな人でした

 森正洋先生のことを初めて知ったのは、二〇〇〇年頃だった。当時僕は長崎県商工労働部長で長崎県のやきもの振興を担当していた。その頃知り合いになった波佐見の商社の人たちから「モリセイヨウ先生」という不思議な音の名前を聞いた。佐賀県の生まれながら活躍の場が長崎県というのも不思議なご縁のような気がした。

 いつかお目にかかりたいと思いながらもそのことが叶えられないまま僕は長崎県を辞し、佐賀県知事選挙に出馬、佐賀県知事となった。当選した二〇〇三年の、確か夏だったと思うが佐賀市呉服元町の願正寺というお寺でまちづくりについてのシンポジウムが開かれた。「そこに森正洋先生が来られるから知事も来ませんか」と声をかけていただき、やっと先生にお目にかかることができた。当時先生は相当体が弱っておられ、シンポジウムでもほとんどご発言をされなかったのではないかと思う。控えのスペースで半ば横になっておられるような状態でお目にかかった。
 二言三言言葉を交わしたように思うが、ひょっとしたら交わしてさえいないかもしれないとも思う。しかしながら先生はそこに居られるだけで充分だった。シンポジウムに来ている人たちに、そして先生とともにいる私たちに、「しっかりやれ」ということをおっしゃっていた、ような気がしている。

 生前はほとんど佐賀県内で展覧会をされることがなかったと思うが、他界された後に九州陶磁文化館で「森正洋の全仕事展」が開催された。
 そして有田は今、四百年に向けて、有田だけでなく伊万里、嬉野、武雄も巻き込んで新しいムーブメントを起こそうとしている。もし今のタイミングで先生がご健在であれば、いろんなアドバイスを私どもに聞かせていただけたであろうと思うし、気のせいだが先生のつぶやきが聞こえるような気さえする。
 いまなら、モリセイヨウ的なものを受け入れることが産地としても十分にできるのではないかと思う。

 先生が他界されてしばらくした後、僕のお気に入りの映画館『シエマ』に行ったところ、イベントスペースに見覚えのある茶碗が並んでいた。
 高台内に「も」と書いてある、先生の平めし茶碗だ。
 先生と久々に対面したような気がして、嬉しくて買い求めた。

 仕事柄、我が家にはいくつかのごはん茶碗がある。作者に気を遣いつつ、いろんな茶碗を使っているが、その使いやすさゆえについついこの「もの字」を手に取ることが多い。
 だから先生とは遠く離れた気がしていない。器を通して先生とお話をさせていただいている気がしている。

 本当に話をしたのかしていないのかわからないけど、いつも話をしているような、そんな気にさせる人。

 森正洋とはこんな人でした。

前佐賀県知事  古川 康

(この原稿は、知事在任中の二〇一四年一一月一三日に頂きました。なお、何カ所かに読点を打たせて頂きましたことをお断りしておきます。 森正洋デザイン研究所 代表 筒井)

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