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2013.09.15

内野山窯と森正洋の共通点 – 「超」ロングライフデザイン

2013(H25)年6月28日(金)付けの佐賀新聞17面文化学芸欄に寄稿された、九州陶磁文化館学芸課長 家田淳一氏の記事につきまして、許諾を得て以下に転載します。


 

内野山窯と森正洋の共通点
「超」ロングライフデザイン

 Gマークの付いたグッドデザイン賞の商品を目にしたことのある方も多いと思う。この制度は1957年に始まり、今日では工業製品に限らず建築や映像、モバイルアプリなどの多様な分野で「よいデザイン」を選定し続けている。近年では大賞から種々の特別賞を含め毎年1000点以上が選定されている。
 例えば2012年は、17日まで当館で展示していた森正洋デザインのマルティブルーシリーズの皿・ボールがロングライフデザイン賞に選ばれている。この賞の選考基準の一つが「発売以来10年以上継続的に提供され、かつユーザーや生活者の支持を得ていると思われる商品」ということで、1976年発売のこの製品が選ばれた。

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G型しょうゆ差し(グリーン)=高さ9cm、森正洋 1958年~

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銅緑釉蛇目皿 肥前・内野山窯17世紀後半~18世紀前半、口径12.6cm = 佐賀県立九州陶磁文化館蔵(川内賢一氏贈)

 森正洋デザインでロングライフデザインといえば、1958年から半世紀を超えてもなお販売が続く、G型しょうゆ差しをまず思う。今でも常に売り上げの上位と聞くから、驚異的な「超」ロングライフデザインである。
 ところで、江戸時代の肥前陶磁でこのように半世紀以上スタイルを変えずに続いた製品があっただろうか。江戸時代の肥前陶磁を前期(17世紀)中期(18世紀)後期(19世紀)と従来の一世紀単位の年代観で見ると、一つの製品が100年か50年以上は続いていたように思いがちだが、近年の研究では陶器も磁器もより細かく変化していたと考えるのが実態に近い。
 特に有田磁器は窯跡出土品と柴田夫妻コレクションなどの研究で明らかになってきたように変化が著しい。「10年単位で変化が追える」「絶えず製品を変えて来たから有田は400年続いた」などの柴田明彦氏の言葉を思い出す。
 しかし、変化を続けた江戸時代の肥前陶磁の中で、長期間ほとんど変化せずに売れ続げた珍しい製品がある。嬉野の内野山窯の銅緑釉碗・皿である。
 江戸初期頃に開窯していたこの窯は、17世紀後半に銅緑釉をたっぷりと掛け、文様を一切かかない青緑色の製品を作り出す。17世紀後半こそ碗・皿に加え大振りの彫り文様の皿や鉢などやや多種類だが、碗・皿だけは18世紀前半まで一貫して続き、北海道から沖縄まで日本のいたるところで出土する。正確な制作年代は分からないが、途中でやや小型化するだけで同じ色、形のものが1世紀近くも売れ続けた江戸時代の「超」ロングライフ商品だ。
 内野山窯の碗・皿が、なぜ1世紀近くも売れ続けたのかは説明が難しいが ①有田磁器に比べ廉価 ②それまでの灰釉陶器に比べてショッキングなくらいビビット(鮮やか)な色彩 ③陶器としては硬い素地で割れにくかったーなど、価格、デザイン、機能の要素が関わっていたように思う。
 ひるがえって、森正洋のG型しょうゆ差しを見ると、たれにくい注ぎ口に代表される機能性、シンプルで飽きのこないデザイン、手頃な価格という共通する要素がある。生前、森氏の作品のマークを時代順に並べようとしていたら、「そんなの学芸員の発想」「売れるものは何年も続き、売れないものは2〜3年で消える」と言われたのを思い出した。
 既に半世紀を超え売れ続けているこのしようゆ差しが、やがて1世紀に近づき、江戸時代の内野山製品を超えるのではないかと期待する。我が家の食卓にのる20年以上前に買ったグリーンのG型しょうゆ差しと、同じ頃に長崎自動車道の工事に伴い発掘調査した内野山窯の緑色の銅緑釉碗皿がダブって見える今日この頃である。

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